和泉大学

言語聴覚学専攻

SPEECHLANGUAGEHEARINGTHERAPY

吃音は治るの?言語聴覚士が行うリハビリと支援の考え方

「言葉がつまる」「同じ音を繰り返してしまう」など、どもった話し方や
話しにくさは、吃音(きつおん)と呼ばれます。

吃音は、決して珍しいものではなく、身近なところで見聞きする機会もあります。しかし「なぜ起こるのか」「治るのか」「リハビリでは何をするのか」といった点については、意外と知られていないのではないでしょうか。

言語聴覚士を目指す人にとって、吃音は“言葉の支援”を理解するうえで欠かせない重要なテーマの一つです。
吃音のある人が、どのような困難を抱え、どのような支援が行われているのかを知ることは、将来の専門性を考えるうえでも大切な視点になります。

この記事では、吃音の基礎知識から、言語聴覚士が行う吃音リハビリの考え方、さらに子どもと大人それぞれへの支援の違いまでを、順を追ってわかりやすく解説します。

「どもり」は治せる?吃音(きつおん)とは?

「吃音(きつおん)とは?」吃音を気にする男性のイメージ

「言葉につまるのは、練習が足りないから?」「緊張しやすい性格だから?」
吃音(きつおん)や「どもり」という言葉を聞くと、そんなイメージを持つ人もいるかもしれません。
しかし、現在では、吃音は本人の性格や努力不足、育て方が原因ではないことが、専門的な研究や公的機関の見解から示されています。

また、吃音は、セリフを噛んだり、一時的に言葉に詰まったりする状態とは異なります。

話したい内容は頭の中にはっきりとあるにもかかわらず、いざ声に出そうとすると、思うように言葉が出てこない
そのような状態が繰り返し起こる、発話の特性です。

そのため、話し方そのものの困難に加えて、「またうまく話せなかったらどうしよう」という不安や緊張が積み重なり、学校生活や人との関わり方に影響することも少なくありません。
言語聴覚士の仕事を理解するうえでは、吃音を単なる「話し方の問題」として捉えるのではなく、その人の生活や気持ちと深く結びついた状態として理解する視点が大切です。

まずは、吃音の基本的な症状や背景について整理していきましょう。

吃音の症状と原因

吃音とは、発話の途中で言葉がなめらかに出にくくなる、主に発達期に生じやすい発話の特性です。

具体的には、次のような症状が見られることがあります。

  • 言葉の最初の音を繰り返してしまう【連発】(例:お、お、お、おはよう)
  • 言葉を出そうとすると、一瞬声が止まる【難発】(例:……おはよう)
  • 音を引き伸ばすように話してしまう【伸発】(例:おーはよう)

これらの症状は、いつも同じ強さで現れるわけではありません。
人前で話すときや緊張する場面で出やすく、独り言や歌を歌うときには目立たなくなることもあります。
また、話そうとする際に無意識に体に力が入り、顔をしかめる、体を動かしたりするなどの動きが伴う場合もあります。

こうした経験が重なることで、「話すのが怖い」「また失敗するかもしれない」と感じ、言葉を言い換えたり、発言そのものを避けたりするようになる人もいます。

近年の研究では、遺伝的な要因や脳の働き方といった生まれ持った体質に、発達や環境の影響が重なって吃音が生じると考えられています。
つまり、吃音は「誰かのせい」で起こるものではありません。この理解は、適切な支援を考えるうえでとても重要です。

吃音の種類

吃音には、はじまり方による分類があり、大きく分けて「発達性吃音」と「獲得性吃音」の2つがあります。
そのうち、吃音の9割以上は低年齢期から発症する、発達性吃音です。

①発達性吃音

一般的に「吃音」や「どもり」と呼ばれるものの多くは、幼児期から学童期にかけて始まる発達性吃音です。
言葉を覚え、話す力が発達していく過程で見られるもので、言語聴覚士が学校や医療、福祉の現場で支援する機会が多いタイプでもあります。

②獲得性吃音

一方、獲得性吃音は、脳血管障害の後遺症や、強い心理的負担などをきっかけに、大人になってから生じる吃音を指します。(例:脳卒中後、PTSD、パーキンソン病など)

このように種類を整理しておくことで、次に紹介する吃音リハビリにおいて、言語聴覚士がどのような役割を担っているのかが、より具体的に理解しやすくなります。

出典:日本吃音・流暢性障害学会 吃音(きつおん)について 2023年10月1日【1】吃音の基礎知識

言語聴覚士が行う吃音のリハビリ

子どもと向かい合わせで座る言語聴覚士のイメージ

吃音リハビリと聞くと、「話し方を矯正する訓練」を想像される人も多いかもしれません。
しかし、実際の支援は、本人が話しやすくなる方法や環境を一緒に整えていくことが中心です。

話すことそのものだけでなく、吃音によって生じる不安や自己評価の低下、日常生活への影響にも目を向けて支援していきます。

吃音を「完全に消す」ことを目標にするのではなく、「その人らしく話し、安心して生活できること」を大切にした関わりが行われています。

吃音へのアプローチ

言語聴覚士の吃音リハビリでは、まず評価が行われます。

どの場面で吃音が出やすいのか、本人は何に困っているのかを丁寧に確認しながら、支援の方向性を検討します。

主なアプローチの例としては、以下のようなものがあります。

  • 話す速さや呼吸を整える練習
  • 話すことへの不安を和らげる支援
  • 周囲の理解を促すための助言

「どもりを治す」ことだけを目標にするのではなく、「話すことを避けなくてすむ状態」をつくることが、言語聴覚士の重要な役割です。

子どもと大人それぞれの支援

吃音リハビリは、年齢によって支援の考え方が異なります

子どもの場合は、本人への直接的な訓練だけでなく、保護者や保育・教育現場への助言が重要となります。
安心して話せる環境づくりは、吃音の悪化を防ぐ大きな要素です。
特に就学前の時期は自然回復が多いため、過度な訓練よりも「適切な環境整備と保護者への支援」が重視されます。

一方、大人の吃音支援では、長年の経験から生じた不安や自己評価の低下にも目を向ける必要があります。
話し方の工夫に加え、「吃音があっても社会生活を送れる」という視点を共有することが、支援の軸となります。

このように、対象者に合わせて支援を組み立てる点に、言語聴覚士の専門性があります。

まとめ

ピースをする子どもの画像

吃音(どもり)は、単なる話し方の問題ではなく、その人の気持ちや生活に深く関わる状態です。
言語聴覚士は、吃音を「治すかどうか」だけで捉えるのではなく、一人ひとりの困りごとに寄り添いながら、話すことへの不安を軽減し、生活の質を高めることを目標に支援を行っています。

吃音リハビリを通して見えてくるのは、「言葉を支える仕事」の奥深さです。

言語聴覚士という職業は、技術だけでなく、人の気持ちを理解する力も求められる専門職だと言えるでしょう。

寄り添うこころ、支える技術
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