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2026.09.02
研究紹介「焙煎八升豆(国産ムクナ豆)にパーキンソン病・レビー小体型認知症の原因タンパク質の凝集を抑える効果を発見」- 研究成果が特許登録
ポイント
- ムクナ豆を特定の条件で焙煎することで、パーキンソン病やレビー小体型認知症の原因とされるαシヌクレインの凝集を阻害する作用が向上することを発見しました。
- 飲食品として摂取可能な形態での提供を想定しており、日常生活を通じた神経変性疾患の予防への応用が期待されます。
- 本成果は株式会社紀州ほそ川との共同研究によるもので、特許第7909212号として特許登録されました。
概要
和泉大学ヘルスプロモーション専攻の 河野良平 講師 、 宇都宮洋才 教授 らの研究グループは、株式会社紀州ほそ川との共同研究において、ムクナ豆(八升豆、学名:Mucuna pruriens)を70~250℃で3~60分焙煎することで、パーキンソン病やレビー小体型認知症の原因タンパク質であるαシヌクレインの凝集を抑制する作用が向上することを明らかにしました。
この成果は「焙煎ムクナ豆を有効成分とするαシヌクレイン凝集阻害剤」として特許登録されました(特許第7909212号)。
背景
パーキンソン病やレビー小体型認知症は、脳内でαシヌクレインというタンパク質が異常に凝集・蓄積することで神経細胞が障害される疾患です。日本国内のパーキンソン病患者は推定約15~20万人とされ、超高齢社会の進展に伴いさらなる増加が見込まれています。現在の治療は主に症状を緩和する対症療法であり、αシヌクレインの凝集そのものを防ぐ根本的なアプローチが求められています。
ムクナ豆はインド原産のマメ科植物で、パーキンソン病治療薬の主成分であるL-ドーパ(レボドパ)を天然に豊富に含むことで知られています。インドの伝統医学アーユルヴェーダでも古来より利用されてきましたが、L-ドーパの補充にとどまらない、αシヌクレイン凝集を直接阻害する作用についてはこれまで十分に解明されていませんでした。
ムクナ豆は日本では古くから八升豆と呼ばれ、近年和歌山県を中心として栽培が進んでいます。八升豆はムクナ豆の変種であると考えられています。
研究の内容
研究グループは、ムクナ豆を様々な温度条件で焙煎し、ヒト神経芽腫細胞(SH-SY5Y細胞)を用いた実験系で、αシヌクレインの凝集に対する阻害効果を評価しました。その結果、70~250℃で3~60分焙煎した焙煎ムクナ豆に、焙煎温度依存的にαシヌクレインの凝集を抑制する効果が認められました。
この焙煎八升豆は飲食品として摂取可能な形態で提供できることも本発明の大きな特長であり、特別な薬剤としてではなく、日常の食生活の中で神経変性疾患の予防に寄与できる可能性を示しています。

左図:培養細胞の顕微鏡画像 未処理の細胞ではαシヌクレイン凝集体(青)が多く形成されるのに対し、焙煎したムクナ豆を添加した細胞ではαシヌクレイン凝集体の形成が抑制される。また、非焙煎ムクナ豆よりも焙煎ムクナ豆の方が抑制効果が高い。緑は細胞の核であり、上と下は同じ視野の細胞を観察している。
右図:顕微鏡画像から算出した凝集体形成量
今後の展望
研究グループは現在、科学研究費助成事業(基盤研究C「ムクナ豆のレビー小体型認知症原因タンパク質αシヌクレイン細胞内凝集予防効果」、2025~2027年度)のもと、焙煎ムクナ豆由来の有効成分の特定やその作用機序のさらなる解明を進めています。将来的には、食品を通じたパーキンソン病やレビー小体型認知症の予防法の確立を目指しています。
特許情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発明の名称 | 焙煎ムクナ豆を有効成分とするαシヌクレイン凝集阻害剤 |
| 特許番号 | 特許第7909212号 |
| 出願番号 | 特願2024-184380 |
| 公開番号 | 特開2026-73833 |
| 出願人 | 株式会社紀州ほそ川 |
| 発明者 | 河野良平、奥野祥治、宇都宮洋才、細川陽介 |
関連する学会発表
- 河野良平 ほか「ハッショウ豆(ムクナ豆)由来成分の焙煎温度依存的変化とαシヌクレイン凝集体形成阻害作用との関連解析」日本農芸化学会2026京都大会(2026年3月)
- Kono R. et al. "Mucuna pruriens inhibits α-synuclein aggregation in human neuroblastoma cells SH-SY5Y in roasting temperature-dependent manner." JSBBA Annual Meeting, Sapporo (2025.3)
- 河野良平 ほか「ムクナ豆(Mucuna pruriens)製品に含まれるL-DOPA量の比較」 第29回日本未病学会学術総会 千葉 (2022.11)